【5冊目】川原礫『デモンズ・クレスト1』のおすすめ&感想
5冊目のおすすめ&紹介記事は川原礫先生の新シリーズ『デモンズ・クレスト』の1巻です!
川原先生の代表作は言わずと知れた『ソードアート・オンライン』ですよね。
実は新シリーズの『デモンズ・クレスト』は、『ソードアート・オンライン』と似た要素が多くあり、兼ねてからのファンも楽しめそうな作品です。
誤解のないようにしてほしいのは、今作は決して『ソードアート・オンライン』の焼き回しではないという点。
……正直に言うと僕自身、読み始めたときは『ソードアート・オンライン』みたいだと思いました。
でも読み進めていくにつれて、『ソードアート・オンライン』のいいとこ取りをした上で、まったく別の魅力を構築していると感嘆してしまいました。
有名作家さんの新シリーズということで、腰を据えて書いていく狙いのようです。
まだまだ導入編といった感じの1巻ですが、2巻以降が楽しみになってしまいます。
「おすすめ&感想記事」の読み方
まずは記事の読み方からです。
これは毎回載せるので、「くどいよ!」と思う人は読み飛ばしてくださいね。
最初に独断と偏見で、読了した作品への評点を発表します。
プロの先生方の作品を評価するという行為に抵抗はありますが、この形が一番わかりやすいんじゃないかなぁと思っています。
以下の感じです。
- 各項目10段階で採点。(特に優れていたら10点以上もつけます)
- 評価項目は随時変わる、かも。
- 記事にするのは平均7点以上になった小説のみです。よって、このブログで紹介しているのは僕がとくに面白いと感じた作品ということになります。
- 小説への評価(感想)は人生を通して変化していくもの。再読した場合には第2弾以降の評点も追記します。(以前の評点もそのまま残しておきます)
以降、3段階に分けて、小説の感想やおすすめポイントを書いていきます。
あえて3段階に分けるのは、作品のネタバレ度合いを選択できるようにするためです。
単行本裏表紙のあらすじ(またはネット販売ページ上のあらすじ)を引用せていただき、それを元にして僕の抽象的な感想をお伝えします。
必要最低限のネタバレのみで読み始めたい人はここまで。
物語の核心には触れませんが、どんなストーリーなのかや、どんな気持ちにさせてくれる小説なのかといった僕なりの感想を書いていきます。
ある程度ネタバレを避けつつ、自分に合った小説なのかを吟味してから読み始めたい人はここまで。
読了済みの人に向けた感想です。
みなさんと感想を共有できたら嬉しいです!
【独断と偏見】『デモンズ・クレスト1』の評点
『デモンズ・クレスト1』を独断と偏見で評点します。
ストーリー 6 | シリーズものの導入となる1巻です。世界観や設定、キャラ紹介を主としています。臨場感たっぷりで雰囲気がすごく良い。伏線もたっぷりで、次巻以降がすごく楽しみ。絶対読みます! |
キャラ 9 | 主人公をはじめ主要キャラに、好感と共感を持てます。小学生という設定ですが、子供過ぎず、ほどよく大人な印象なのが良いあんばい(今どきの子は実際もこんなに大人びているのでしょうか?)。 あえて小学生にした意図は、あとがきで語られていますので、そちらもお楽しみに。 登場人物はけっこう多め。名前が紹介されたキャラ全員を覚え切れていませんが、2巻以降で覚えていくことにします。(1巻に関しては覚え切れなくても問題なさそう) |
没入感 9 | ホラー要素というかパニック要素というか、とにかく臨場感たっぷりです。主人公たちと一緒になって、のめり込んで読めるはず。 |
エモ度 (感情的) 7 | シリーズ1巻ということもあって、川原先生自身も、大きな感動をとか考えていないはず。2巻以降への期待感がたっぷりですし、極限状態にある主人公たちの優しさにジンとくる場面も多数です。 |
読みやすさ 10 | 流石というか、読み味が最高です。 テンポ良く話が進み、情報が自然に頭に入ってきます。ホントに見習いたい。 おそらくまだ書きたいシーンを書いていないと思うので、2巻以降の力の入ったシーンでの文章も楽しみですね。 個人的に156ページからのシーンの雰囲気が好き。『ソードアート・オンライン』の名シーンを想起しました。 |
合計点:41 平均点:8.2 | おそらく導入編なので点数は落ち着き気味。 ……導入編にしてはむしろ高すぎる気もしますが。 2巻以降も必ず記事にするのでお楽しみに。(記事にする基準は平均点7.0以上ですが、まず間違いなく超えてくるはず) |
ネタバレLevel①『デモンズ・クレスト1』のおすすめ&感想
「お兄ちゃん、ここは現実だよ!」
Amazon『デモンズ・クレスト1』(川原礫/電撃文庫)の作品紹介より
雪花小学校6年1組の芦原佑馬は、VRMMORPG《アクチュアル・マジック》のプレイ中、ゲームと現実が融合した《新世界》に足を踏み入れる。
事態が飲み込めず混乱する佑馬の前に現れたのは、クラス一の美少女・綿巻すみかだった。だが彼女の容姿は悲劇的なほどに変貌していた。それはゲームの『モンスター』としか思えないもので……。
「――これはゲームであって、そして現実だ」
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)に続く、川原礫最新作の舞台は、MR(複合現実)&デスゲーム!
「VRMMORPG」「ゲームであって現実」といったワードからは、やはり『ソードアート・オンライン』が連想されます。
(僕は川原先生の『アクセル・ワールド』を未読なのですが、『アクセル・ワールド』も似た感じなのでしょうか?)
しかし、記事の冒頭で触れたように『デモンズ・クレスト』には、違った面白さがあります。
キーワードは紹介文中にある2つ。
- ゲームと現実が融合した《新世界》
- MR(複合現実)&デスゲーム
『ソードアート・オンライン』はゲームの仮想世界に閉じ込められた主人公たちが、脱出条件でもあるゲームクリアを目指す物語。
ゲーム内でHPがゼロになると、現実世界の身体に電気を流して脳を壊されるという設定でした。
仮想と現実を「死」という恐怖で繋げていますが、舞台はあくまで仮想世界です。
一転して『デモンズ・クレスト』は、まさに「ゲームと現実が融合」しています。
ネタバレを避けるべく詳細は省きますが、これによって以下のような面白さが……!
- ダメージを受けるとHPが減るだけでなく、実際に負傷してしまう……。
『ソードアート・オンライン』では、HPがゼロにさえならなければよかったですが、『デモンズ・クレスト』の世界ではそうはいきません。血が出るし、骨だって折れる。より緊迫感たっぷりなシーンの数々は必見です。 - 《新世界》ならではの出来事に注目!
仮想と現実が融合しているからこそ起きる現象、そして主人公たちの行動には、かつてない新鮮さがあります。読んでいて純粋に楽しめる作品です。 - 多くの謎が生まれているのも魅力です。
主人公たちは事態を把握できないまま、渦中に放り込まれます。仮想とも現実ともはっきりしない《新世界》で、手探りし、考え、対応し、何より協力しながら生き抜くべく奮闘するわけです。読めば分かりますが、主人公たちが小学6年生という点も絶妙かと。
重厚な世界観、ベテラン作家の安定して読みやすい文体、ライトノベルならではのワクワク感、そしてここから加速度的に面白くなっていきそうな予感……。
自信を持っておすすめしたいシリーズ第1巻です!
ネタバレLevel②『デモンズ・クレスト1』のおすすめ&感想
もう少しだけネタバレを解禁して紹介していきますね。
1巻での狙いはおそらく、世界観や設定、キャラの紹介をしつつ、先が楽しみになるような謎を散りばめることでしょう。
そういった下地ありきで、これから物語が展開されていくのだと思うと楽しみでなりません。
著名なベテラン作家さんの新シリーズということで、2巻以降のクオリティもほぼほぼ保証されているのも安心ですね。(先が楽しみな作品の打ち切りはホントに悲しいですから……)
読み終えてなお謎は多く残り、重厚な物語の片鱗が多く感じられます。
個人的にわくわくさせられるのは主人公のジョブですね。
ゲーム《アクチュアル・マジック》では、戦士や魔術師、僧侶などのジョブを選択できます。
これは現実と融合した《新世界》でも極めて重要です。
ゲームオーバーなったからやり直し——ができない世界なので、回復役である僧侶の重要度が増していたりといった変化が面白い。
で、肝心の主人公のジョブは”魔物使い”です。
特定の工程をこなすことで敵モンスターをカードに封じ込め、召喚することで使役できます。(なんだかポケモンを連想しますね)
敵だったモンスターが懐いて味方してくれるのが愛らしくて嬉しいですし、主人公がいろんなモンスターを手に入れることで強くなっていくのもワクワクします。
さらに、使役するモンスターにステータスがあるのも面白いです。
特に”忠誠値”なるステータスが重要な役割を果たしてくれそうです。
言うこと聞いてくれなかったモンスターと絆を結ぶ過程とか楽しみにしています。
……そしてこれを説明した上で、ネタバレLevel①で引用した作品紹介文を読んでいただくと、より面白い展開になりそうな予感を共有してもらえるのではと思います!
ネタバレLevel③『デモンズ・クレスト1』のおすすめ&感想
この先はネタバレに配慮してないので、ご注意ください!
1巻の幕引きはサワの正体である《悪魔》でしたね。
(正体というにはまだまだ謎ばかりですが……)
読み進めながら残りページが少なくなるにつれて、1巻をどう締めるのかすごく気になっていましたが、こうきましたか。
サワがやたらと情報通だったり、何か隠しているであろうことがしきりに描写されていたので、納得といえば納得です。
でも個人的には、導入編の1巻とはいえ綺麗に締めてほしかったという思いもあります。
あまりに唐突だなー、と。
世界観や設定、展開の仕方が秀逸すぎて、先がすごく楽しみなのは本心ですが、この幕引きの仕方そのもので2巻が楽しみにはならないですね……。
それもあってストーリーの評点を6とした次第です。
でも多分、2巻以降の先を見越して、導入の1巻としてこれがベストと判断したんでしょうね。
僕は10万字(文庫本1冊分くらい)かけての導入編なんて書いたことないですし、未知の領域です。
それにこの幕引きも好みが分かれるのでしょう。
印象的でカッコいいとは思うので、この幕引きにシビれる読者も少なくないのではと思います。
そして今回は、著名なベテラン作家さんの新シリーズ導入編をせっかく拝読したので、勉強がてらプロットというか構造を見ていこうと思います。
以下は僕が今回書いた読書ノートです。
(さすがに完全なネタバレを公開するのは問題あるので、内容は読めないようにしてあります)
左側に並んでいるのが独断でシーンごとに区切ったプロットもどきです。
全部で12シーン。
ワンシーンあたりが長いのは、状況を動かすのを最低限にして、世界観や設定、キャラの情報開示に注力しているからと思います。
時系列はシンプルに並んでいますが、プロローグだけ少し捻ってますね。
全体の21%にあたるシーンを、プロローグで先んじて書いています。
以下の感じです。
プロローグで読者の興味を惹くシーンをばしっと見せるのは『ソードアート・オンライン』でも使われていた手法ですね。
これは手軽に導入できて効果的な手と言えそう。
そして1巻で開示した主な情報、および謎は以下の通り。
おおよそプロット順に並べています。
- (現実と融合する前の)ゲームのチュートリアル。
=ベースとなるゲーム要素を見せておく。これがあるから、後から現実とどう融合したか分かりやすい。 - チュートリアルを通してキャラの性格も表現。
- フルダイブの理論や使用しているデバイスの情報。
=世界観に説得力を持たせる情報。 - 仮想と現実が融合した世界での戦闘。
=魔法が使える。現実と融合したことで生じる新要素を見せる。 - ナギの行方がわからない。
=謎1つ目。 - 現実のアイテムを活用して戦闘に勝つ。
=このシリーズならではの魅力を見せる。 - ユウマの意識の中で意味深すぎる光景を見て、謎の少年と出会う。
=謎2つ目。おそらくこれがシリーズの根幹となる。 - おおよその情報を出し終え、他のクラスメイトと合流し、紹介していく。
=2巻へ繋げるために必要。序盤でやると大所帯になりすぎるため、序盤は少数精鋭で設定の開示に注力したと思われる。 - クラスメイトに死者が出る。
=実際に死者を出すことで緊張感を高める。これは『ソードアート・オンライン』でも使われていた手法。 - ライバル(敵?)ポジションとなるガモの様子がおかしい。からの、人がモンスターになるシーン。
=謎3つ目。 - 最大のピンチに陥り、サワが『悪魔(デモン)』に。
=謎4つ目。(サワの正体や隠し事は、1巻で最も前フリや伏線が多かった。)
……備忘録も兼ねて並び立ててみましたが、これだけを1冊に収めた上でストレスなく読めるのは凄まじい手腕ですね。
2巻以降は上記の内容に注目しながら読もうと思います。
それでは今回はこのあたりにしておきます。
おそらく長く続くシリーズなので、みなさんと一緒に楽しめたら最高です!